国語 文学的文章の読み方の予想問題5問——心情・情景描写・人物像を1問ずつ解説
文学的文章は、気持ちが直接書かれていないところを、行動・表情・景色の描写から読み取れるかが大切です。この記事のために書いた短い物語文を使い、行動からの心情、せりふの抜き出し、情景描写、表現の細かい言葉、人物像の5問にしぼって、まちがえやすいところを1問ずつ解説しました。説明文の読み方は → 説明的文章の予想問題。
- 気持ちが書かれていないときは、行動・表情・ものの様子から読み取る
- 抜き出しは、問いの条件(これまでか、これからか など)をよく読む
- 景色の描写には、登場人物の気持ちが重ねられていることがある
- 「少しだけ」「そっと」などの細かい言葉が、気持ちの大きさを表す
- 人物像は、せりふ・行動・表情の手がかりをまとめて決める
本文(この記事のための自作の物語文)
放課後の音楽室には、夕日が長くさしこんでいた。合唱コンクールの練習が終わっても、美咲は一人、ピアノの前から動けなかった。今日の練習でも、同じところで指がもつれたのだ。「伴奏なんて、引き受けなければよかった。」小さくつぶやくと、楽譜の上に、ぽつりと水のしみが広がった。
そのとき、戸が開いて、指揮者の健太が顔を出した。「まだいたのか。」健太は美咲のとなりに立つと、少し照れくさそうに言った。「さっきのところ、ぼくもいつもテンポを速くしすぎてたんだ。明日から、ぼくが合わせるよ。」
美咲は顔を上げた。窓の外では、雲のすき間から一番星が光っていた。美咲はもう一度、鍵盤にそっと指をのせた。音楽室に、さっきよりも少しだけ明るい音がひびいた。
問題(まず自分で解いてみよう)
- 本文の「楽譜の上に、ぽつりと水のしみが広がった」から読み取れる美咲の様子として最も適切なものを、次のア〜エから1つ選びなさい。
ア 練習の出来に満足して、ほっとしている イ うまくひけない自分が情けなく、涙をこぼしている ウ 窓から雨が入ってきて、あわてている エ 健太が来るのを待ちきれずにいる - 健太のせりふの中から、健太がこれからどうするつもりかを述べている一文を抜き出しなさい。
- 本文の「窓の外では、雲のすき間から一番星が光っていた」という表現は、どのようなことを表していますか。最も適切なものを、次のア〜エから1つ選びなさい。
ア 美咲の心に、前向きな気持ちが生まれはじめたこと イ 練習の時間が終わってしまったこと ウ 天気が急に悪くなってきたこと エ 健太が帰ろうとしていること - 本文の「さっきよりも少しだけ明るい音」から読み取れる美咲の気持ちとして最も適切なものを、次のア〜エから1つ選びなさい。
ア 不安はすっかり消え、自信にあふれている イ まだ不安は残っているが、少し前向きになっている ウ 健太に腹を立て、わざと強くひいている エ 練習をやめて帰りたいと思っている - 本文から読み取れる健太の人物像として最も適切なものを、次のア〜エから1つ選びなさい。
ア 自分の失敗も打ち明けて、相手を気づかう思いやりのある人物 イ 人のまちがいを厳しく注意する、きびしい人物 ウ ほかの人のことには関心がない、冷たい人物 エ 自分の力を自まんしたがる人物
目安:1問1〜2分。解き終わったら、下の「答えと解説を見る」を開いて確かめましょう。
答えと解説
問題1
本文の「楽譜の上に、ぽつりと水のしみが広がった」から読み取れる美咲の様子として最も適切なものを、次のア〜エから1つ選びなさい。
ア 練習の出来に満足して、ほっとしている イ うまくひけない自分が情けなく、涙をこぼしている ウ 窓から雨が入ってきて、あわてている エ 健太が来るのを待ちきれずにいる
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答え:イです
考え方:文学的文章では、気持ちが直接書かれていないことがよくあります。そのときは、行動・表情・ものの様子から気持ちを読み取ります。
解き方:直前に「同じところで指がもつれた」「伴奏なんて、引き受けなければよかった」とあり、美咲は自分を責めています。その直後に楽譜にぽつりと水のしみが広がるので、これは美咲の涙だと分かります。したがってイです。
よくあるミス:① 「水のしみ」を言葉どおりに受け取り、ウを選ぶミス。室内の楽譜に落ちた一しずくなので、雨ではなく涙を遠回しに表しています。② 前後の文を読まずに選ぶミス。気持ちの読み取りは、直前の出来事やせりふと必ず結びつけます。
確かめ:「引き受けなければよかった」というせりふと、涙という読み取りは、どちらも落ちこんだ気持ちを表していて食い違いがありません。前後の文と気持ちがつながることで確かめられます。
問題2
健太のせりふの中から、健太がこれからどうするつもりかを述べている一文を抜き出しなさい。
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答え:「明日から、ぼくが合わせるよ。」です
考え方:抜き出しでは、問いの条件をよく読みます。ここでは「これからどうするつもりか」なので、これからの行動を述べた文をさがします。
解き方:健太のせりふは「まだいたのか。」「さっきのところ、ぼくもいつもテンポを速くしすぎてたんだ。」「明日から、ぼくが合わせるよ。」の三つです。これからの行動を述べているのは明日から、ぼくが合わせるよ。の一文です。
よくあるミス:① 「さっきのところ、ぼくもいつもテンポを速くしすぎてたんだ。」を抜き出すミス。この文はこれまでのことを打ち明けた文で、これからの行動ではありません。② 「ぼくが合わせる」だけを書くミス。「一文を抜き出す」ときは、文の初めから句点までを書きます。
確かめ:抜き出した文には「明日から」というこれからを表す言葉がふくまれています。問いの「これからどうするつもりか」と言葉が対応していることで確かめられます。
問題3
本文の「窓の外では、雲のすき間から一番星が光っていた」という表現は、どのようなことを表していますか。最も適切なものを、次のア〜エから1つ選びなさい。
ア 美咲の心に、前向きな気持ちが生まれはじめたこと イ 練習の時間が終わってしまったこと ウ 天気が急に悪くなってきたこと エ 健太が帰ろうとしていること
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答え:アです
考え方:物語の中の景色の描写は、ただの景色ではなく、登場人物の気持ちを重ねて表すことがあります。これを情景描写といいます。
解き方:この描写は、健太の言葉を聞いて美咲が「顔を上げた」直後にあります。雲のすき間から星が光る様子は、落ちこんでいた美咲の心に明るさや希望が見えはじめたことを重ねています。したがってアです。
よくあるミス:① 時刻の説明だと考えてイを選ぶミス。時刻だけなら物語の流れには必要ありません。なぜこの場面に置かれているかを考えます。② 「雲」という言葉からウを選ぶミス。この描写の中心は、雲のすき間から光る星のほうです。
確かめ:このあと美咲は「もう一度、鍵盤にそっと指をのせた」と、また練習を始めています。描写のあとの行動が前向きになっていることで、アが合っていると確かめられます。
問題4
本文の「さっきよりも少しだけ明るい音」から読み取れる美咲の気持ちとして最も適切なものを、次のア〜エから1つ選びなさい。
ア 不安はすっかり消え、自信にあふれている イ まだ不安は残っているが、少し前向きになっている ウ 健太に腹を立て、わざと強くひいている エ 練習をやめて帰りたいと思っている
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答え:イです
考え方:表現の細かい言葉に注目します。「明るい音」は、音の様子で気持ちの明るさを表しています。さらに「少しだけ」という言葉が、気持ちの変わり方の大きさを表しています。
解き方:「明るい音」から、美咲の気持ちが前向きになったことが分かります。しかし「さっきよりも少しだけ」なので、不安がすっかり消えたわけではありません。まだ不安は残っているが、少し前向きになっている、というイが最も適切です。
よくあるミス:① 「明るい」だけを見てアを選ぶミス。「少しだけ」を読み落とすと、気持ちの変化を大きく読みすぎてしまいます。② 気持ちを表す言葉が書かれていないので、本文にない気持ちを想像して選ぶミス。答えの根拠は本文の言葉の中にあります。
確かめ:美咲は「そっと」指をのせています。思い切り弾くのではなくそっと弾き始める様子も、まだ不安が残っていることと合っていて、イが正しいと確かめられます。
問題5
本文から読み取れる健太の人物像として最も適切なものを、次のア〜エから1つ選びなさい。
ア 自分の失敗も打ち明けて、相手を気づかう思いやりのある人物 イ 人のまちがいを厳しく注意する、きびしい人物 ウ ほかの人のことには関心がない、冷たい人物 エ 自分の力を自まんしたがる人物
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答え:アです
考え方:人物像は、その人物のせりふ・行動・表情をまとめて考えます。一つの言葉だけで決めず、いくつかの手がかりが同じ方向を向いているかを見ます。
解き方:健太は、残っている美咲のとなりに立ち、「ぼくもいつもテンポを速くしすぎてた」と自分の失敗を打ち明け、「明日から、ぼくが合わせるよ」と支えることを申し出ています。「少し照れくさそうに」という表情からも、まっすぐに優しさを表すのが少し恥ずかしい様子が分かります。したがってアです。
よくあるミス:① 「さっきのところ」という言葉から、美咲のミスを注意していると考えてイを選ぶミス。健太は美咲を責めず、自分のほうの原因を話しています。② 「照れくさそうに」を冷たさと取りちがえるミス。照れくささは、気持ちを素直に伝えることへの恥ずかしさを表しています。
確かめ:健太のせりふと行動のどれを見ても、美咲を責める言葉や自まんの言葉はありません。すべての手がかりが「相手を気づかう」方向でそろっていることで確かめられます。
文学的文章の読み方のまとめ表
| 問われること | 手がかり | 確かめ方 | この記事の問題 |
|---|---|---|---|
| 行動からの心情 | 直前の出来事・せりふ | 前後の文と気持ちがつながるか見る | 問題1 |
| せりふの抜き出し | 問いの条件(これまで・これから) | 条件を表す言葉がふくまれるか見る | 問題2 |
| 情景描写 | 描写が置かれた場面と前後の行動 | 描写のあとの行動と合うか見る | 問題3 |
| 表現の細かい言葉 | 「少しだけ」「そっと」など程度を表す言葉 | ほかの言葉の様子とそろうか見る | 問題4 |
| 人物像 | せりふ・行動・表情のまとめ | すべての手がかりが同じ向きか見る | 問題5 |
迷ったときの手順
- だれが、いつ、どこで、何をしている場面かを最初につかむ
- 気持ちが変わる前と後、そのきっかけになった出来事やせりふに線を引く
- 行動・表情・景色の描写を見つけたら、そのときの気持ちを考える
- 「少し」「そっと」「思わず」など、程度や様子を表す言葉を読み落とさない
- 選んだ答えが、本文のほかの部分と食い違わないかを確かめる
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よくある質問
気持ちが書かれていないときはどう読み取りますか?
行動・表情・ものの様子に注目し、直前の出来事やせりふと結びつけて考えます。読み取った気持ちが前後の文と食い違わないかも確かめます。
情景描写とは何ですか?
景色や天気などの描写に、登場人物の気持ちを重ねて表す書き方です。描写が置かれた場面と、その前後の人物の行動に注目します。
人物像はどうやって決めますか?
一つのせりふだけで決めず、せりふ・行動・表情の手がかりをいくつか集め、それらが同じ方向を向いているかで判断します。
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